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2024.07.14
事前通知が遅い!

税務調査を開始するには事前に税理士又は調査先、場合によってはその両方に事前通知をしなくてはならない。

ある顧問先に対して7月中旬に税務調査を開始したいとの連絡が来た。6月の初旬にことである。

とりあえず日程を確定してから事前通知をするのは一般的な行為である。しかし、この時は税務署の定期異動が7月にあって調査担当者が決まらないので事前通知はできない。定期異動の内示がでた後の7月初旬に事前通知するという。

事前通知に1か月もかかる

ちょっと待てよ、そんなのは税務署の都合やろ。調査担当者も決まらずに調査日程を先に決めて、調査日の1週間前くらいに事前通知ってどういうこと?その時期のこちらの都合もある。こちらは毎日外出したりして時間がなかなか取れないこともある。調査開始日まで1か月以上あるのに、こちらの時間の取れる時に事前通知してほしいと伝えた。

税務署の言う7月初旬に事前通知できなかったら法定要件を見た際のだから調査は開始できない。お互いに時間の無駄になるから、無駄な行動はしないでほしいと伝えた。しかし、税務署の都合ばかり主張し、「ご協力をお願いします」の一点張りである。

果たして7月初旬がやってきた。連日の多忙な日々で外出や会議も増えている。税務署から電話がきたが、あいにく外出中であることばかり。もどりは大抵午後5時を回る。そのころに電話をしても税務署はでない。何度か電話はあったようだが、こちらと時間が合わない。

こちらから電話をかけた。事前通知をするのは税務署がする立場なのに、こちらから電話をするのは筋合いなのだが苦情もかねて統括官に連絡した。

やっと事前通知がされた

6月の時点で事前通知を受ける時間は確保できたので、再三にわたって時間の取れる時期に事前通知をしてくれって頼んだのに、なぜ、多忙になると伝えた時期を選んで通知をするのか。迷惑だ。このまま調査当日を迎えては法定手続きを踏まない税務調査であるから拒絶することもできるが、結果的に時間の無駄になる。そんな税務署の都合に振り回されるのはかなわない。明日の8時半には在室しているので電話するように伝えた。

翌日、8時半に電話がかかってきた。結果的にマニュアル通りの説明をするだけだ。

税務署は事前通知を電話で口頭で行うことに頑なにこだわる。マニュアルを読み上げるだけなら文書を郵送すればいいだろう。さらに大抵の税理士はE-taxを通じてメールができる仕組みになっている。これで通知を送るとすれば済むことである。念を押す意味で、文書が届いたか、メールを確認したかと電話をしてもよいが、書留や受信通知を確認すればわかることでもある。無駄な行動が多いと常に感じる。

ただ、事前通知の内容に疑問を感じることがあった。現金監査をするという。現金監査とは調査日の現金を確認するということだ。しかし、調査対象期間は過去である。しかも、調査の目的は申告書の記載内容の確認と述べている。現金監査は調査対象期間から外れているし、調査日現在の現金残高や帳簿の記載状況など調査通知内容には含まれていない。

現金監査をしたい?そんな権限はない!

青色申告の要件確認が調査項目に入っていれば理解できないこともない。といっても、帳簿はリアルタイムに記帳しなくてはならないという法定の要件はないため、調査日現在で記帳がされていなくも調査対象期間に影響するものではない。日頃の記帳状況を確認したいという調査権限も存在しない。できるのは税務申告の内容が間違っていないかを調べる権限だけである。毎日記帳ができているかのチェックなど権限を外れていることを知らせ、とんでもない申し出には応じられん、出直してこいといって電話を切った。

15分ほどして電話がかかってきた。現金監査は調査対象期間ではないので行いませんといって謝罪があった。これを機会に税務調査とはどういうものなのか、法律はどのように定められているのか、法令順守を行うよう諭して事前通知を無事に終了した。

若年の調査担当者は、上司に指導されて述べているのだろうが、上司が無知なのか、納税者や税理士は無知な奴が多いから、法律の枠を超えてやってみろと指導されているのかと思う。かくいう私も税務署勤務時代、上司から成績を上げるためには人権無視の税務調査手法を指導されてきた経験がある。

後輩の税務職員には人権感覚と本当の調査能力、そして指導行政であることを踏まえた力をつけてもらいたいと常々思うところである。