2017年1月17日
配偶者控除の改正は有効か?(平成29年度税制改正大綱を考える)
平成29年度税制改正大綱は税制改正案として通常国会で審議されます。話題となっている配偶者控除の見直し内容について考えます。
配偶者控除の適用できる配偶者の給与年収を103万円から150万円にしました。また、段階的に配偶者特別控除の金額が減額され、控除が受けられなくなる配偶者特別控除が適用できる配偶者の所得を、76万円未満(給与年収では141万円未満)から123万円以下(給与収入201万円以下)に変更しました。さらに、世帯主の所得が1000万円(給与年収1220万円)を超えると適用しないこととする案です。
この改革を通じて、いわゆる103万円の壁があるため、配偶者である女性が就労時間を調整する問題を一定解消するとされています。もちろん、税制改正大綱はそれで万全とはしておらず、社会保険や企業の配偶者手当の基準の見直しもよびかけています。
配偶者手当制度を設けている企業の多くは、配偶者の年収を103万円までと設定しているところが多く(人事院調べ)、つまり、税法で103万円の壁を引き上げても、所得に直結する配偶者手当の方が、所得税の負担が下がる額よりも大きいので、結局は同じです。
さらに、28年10月からパート労働に対する社会保険の負担が従来の週30時間以上に加え、従業員501人以上の企業の勤務で①所定労働時間が週20時間以上、②月額賃金が8.8万円以上、③1年以上就労見込み、④学生以外の場合も社会保険の負担が発生します。月額8.8万円ということは年収で106万円ほどですから、106万円の壁ができました。さらに配偶者の年収が130万円を超えると、世帯主の社会保険に入ることができません。
結論として、103万円の壁をつぶすには配偶者手当、社会保険の両方が対応しなければ、なかなか崩れない制度です。まだまだハードルの高い制度改革と思いました。
プロフィール
代表疋 田 英 司
平成17年 大阪国税局退官
疋田税理士事務所開設
平成18年 税理士法人京阪総合会計事務所
開設
●現在の主な活動
税理士業務
(開業支援、経営支援、相続のご相談など)
ボランティア支援
NPO法人の支援