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税理士法人 京阪総合会計事務所

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2018年7月4日

週刊誌ネタで考える税金の話

ABCマート元会長から日テレアナへの資金供与

過日、日本テレビアナウンサーの上重聡氏が、
ABCマートの三木正浩元会長からタワーマン
ションの購入資金1億7000万円を無利子で借り
たとする報道があった。マスコミ芸能では道義的
責任に注目が集まっているようだが、税務面には
どのような問題があるのだろうか、興味津々考え
てみた。
無利息融資の問題
まず、無利子の金銭貸与となると相続税法第9
条が思い浮かぶ。
相続税法第9条
 (略)対価を支払わないで、又は著しく低
い価額の対価で利益を受けた場合において
は、当該利益を受けた時において、当該利
益を受けた者が、当該利益を受けた時にお
ける当該利益の価額に相当する金額を当該
利益を受けさせた者から贈与により取得し
たものとみなす。ただし、当該行為が、当
該利益を受ける者が資力を喪失して債務を
弁済することが困難である場合において、
その者の扶養義務者から当該債務の弁済に
充てるためになされたものであるときは、
その贈与又は遺贈により取得したものとみ
なされた金額のうちその債務を弁済するこ
とが困難である部分の金額については、こ
の限りでない。(かっこ書き省略)
これには通達が9-1から14まで存在するが、
本件にかかわる通達は9-10「無利子の金銭貸与
等」がこれにあたる。
同通達9-10
夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関
係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与
等があった場合には、それが事実上贈与で
あるのにかかわらず貸与の形式をとったも
のであるかどうかについて念査を要するの
であるが、これらの特殊関係のある者間に
おいて、無償又は無利子で土地、家屋、金
銭等の貸与があった場合には、法第9条に
規定する利益を受けた場合に該当するもの
として取り扱うものとする。ただし、その
利益を受ける金額が少額である場合又は課
税上弊害がないと認められる場合には、強
いてこの取扱いをしなくても妨げないもの
とする。
この通達によれば、特殊の関係がある者の相互
間で無利子の貸付があった場合は利益があったも
のとみて贈与税が課税されるというのである。
この当事者が特殊な関係があったかどうかは定
かではないが、特殊な関係であるという前提で議
論を進めてみよう。
問題は、但し書き以降の少額または課税上弊害
がないと認められる範囲かどうかであろう。通達
の但し書きは、原則として無利息の金銭貸与だけ
をもって課税するものではないが、例外的に、税
額が高額であり課税上の弊害が著しい場合が課税
するという考えを述べている。
経済的利益の額
そうなると、本件経済的利益の額はどのように
扱うのかという問題がある。財産評価基本通達に
は貸付金債権の評価方法はあるが、経済的利益の
判断にかかる通達はない。
参考となるものに平成元年6月16日の国税不
服審判所の裁決事例がある。これは、親子間の無
利息貸付に対し利息相当額に贈与税を課税した事
例である。争われたのは課税の適否であり、課税
価格に関する争いはないので、この裁決に書かれ
ている課税価格の計算を紹介しておく。
課税価格は各年分の借入金に対し、利息を計算
している。
計算は単純だ。期間別の借入金の額を算出し、
利率を掛けて計算している。利率は契約書に取り
決めがなされていないため、民法第404条の規定
に基づき法定利率の5%で計算されている。
裁決には昭和56年から60年までの経済的利益
の金額が計算されているが、ここでは紙面の都合
上、56年についてだけ取り上げる。

(計算表省略)

この計算の結果、課税価格から当時の基礎控除
60万円を引いた金額に税率を掛けて319万4100円
の贈与税と無申告加算税31万9000円が課税され
ている。
1億7千万円の利息
上重アナウンサーの場合、仮に1年間、1億
7000万円を無利子で借りた場合、5%の利率を
掛けて850万円の贈与があった理屈になる。この
場合の贈与税は171万円だ。この金額が少額で課
税上弊害があるのかどうかの判断は行わないが、
似たような金額で過去においては決定処分がされ
ていることを申し添えておく。
こうした課税がなされる理屈はこうだ。
贈与者が多額の金銭を持っていれば、それだけ
で利息等の収入が増えて財産は増加する。つまり、
将来の相続税の課税価格が増えるという理屈であ
る。それが特殊関係人に無利子で貸すということ
は相続財産が減るということである。相続税を補
完する贈与税としては、課税せざるを得ないとい
う理屈だ。
ところで、贈与税の課税の根拠となる相続税法
には、課税価格は「時価」としか書かれていない。
法定利率5%については3%にした上で3年ごと
に改定する変動制を盛り込んだ民法改正案が
2015年3月31日に閣議決定したところだ。低金
利で推移する現代で5%の利率が果たして時価と
いえるかは疑問のあるところだ。
ある時払いの催促なし
この貸し付けが返済開始時期、返済方法、返済
期日の定めがない場合、いわゆる「ある時払いの
催促なし」となれば、実質贈与ではないかという
問題が生じる。この場合、贈与がいつ行われたか
が問題となる。贈与の成立は民法549条に定める
とおり「自己の財産を無償で相手方に与える意思
を示し、相手方がそれに受諾する」ことによって
成立する。
前述の条件での貸付であれば、貸付の日が贈与
の日となる可能性がある。
深読みをした場合、マンションの売却を見込ん
だ経済的利益という考え方も出る。タワーマン
ションの価格は比較的値崩れしないといわれてい
る。仮に1億7000万円で購入したマンションを
2億円で売却した場合、3000万円の利益が出る
(減価償却の計算は省略しているので注意された
い)。上重アナウンサーが売却した場合は居住用
財産を売却した場合の3000万円の特別控除の特
例が見込まれる。つまり無税ということになる。
購入から短期間で売却し、しかもABCマートの
関連会社に売ったような場合は、実質的に3000
万円の経済的利益を受けたのではないかという理
屈が生まれる。
こうなると、税務当局としては成り行きを見な
がら時効がかかる5年をめどに虎視眈々と狙って
くる可能性がある。そして、このような資金の流
れが明らかになった背景も含め、ABCマートを
本丸とした査察の内偵調査が始まっているのかも
しれない。
閑話休題とばかりに、お茶でも飲みながら3面
記事にツッコミを入れた税理士の呟きである。

(2015.05.05税理士新聞 投稿 拙文)

プロフィール

代表疋 田 英 司

平成17年 大阪国税局退官

疋田税理士事務所開設

平成18年 税理士法人京阪総合会計事務所

開設

●現在の主な活動

税理士業務
(開業支援、経営支援、相続のご相談など)

ボランティア支援

NPO法人の支援

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